税務調査が来るとの連絡を受けた時は、どの会社でもドキッとするものですが、連絡を受けてからはどのように対処すればよいでしょうか…。その対応方法のポイントを説明します。
税務署から連絡を受けた時の対処方法
税務署から税務調査に関する電話がかかってきた場合、一般的には任意調査の事前通知です。
税務調査の事前通知とは、管轄の税務署が対象者の同意を得て実施されます。任意調査とはいっても、実際には企業は協力する義務があります。しかし、任意調査の場合は国税の強制捜査のように捜査官が無予告で押しかけてくるわけではなく事前通知の連絡があるのです。
税務調査の日程は事前通知の段階で決められています。ただし、やむを得ない事情がある場合には、日程調整も可能です。
事前通知を受けたあとの準備と対応
税務調査では、最低でも3期分の書類やデータの調査が行われるのが一般的です。当日に慌てないように3期分の書類やデータは準備しておきましょう。
顧問税理士がいる場合には、税務署からの連絡は税理士に入る場合もありますが、税務署から企業側に調査の事前通知が来た場合には、顧問税理士に日程や調査の詳細について伝えましょう。
その際に不安な点や疑問点などがあれば、顧問税理士に素直に話して相談するべきです。もし顧問税理士だけの税務調査対応で不安であれば、調査の時だけ税務調査対応専門の税理士チームに依頼するという手もあります。
税務調査が始まってから気を付けるポイント
国税庁によると、2020年に行った税務調査件数は新型コロナの影響により、約24,000件(前事務年度約60,000件)と大幅に少なかったものの、一般的には年間70,000件前後の税務調査が行われています。
調査件数が多いため、税務職員は1件あたりの調査に大きく時間を割くことができないので、1件あたりの調査にかける日数は平均1~3日で行われることが多いです。
この、短期間の税務調査の中では、書類等の調査、調査官による会社代表者や経理担当者への口頭による確認や質問などです。何かしらの指摘事項があれば当日、あるいは後日連絡があるのが税務調査の流れです。
一般的な質問から調査は始まっている
税務調査の中では、仕事の内容とは直接関係しないような質問を受けることもあります。例えば、社長の親族が普段どのように過ごしているのかや、社長が最近取得した不動産や車がないかなどです。
雑談とも取れるような内容かもしれませんが、調査官は生活の中に何か疑わしいことがないか、社長の性格などの人物像を確認しているのであって、単にどうでもよい会話をしているわけではありませんので注意が必要です。どんな簡単な質問でも揚げ足を取られないように、怪しまれるような回答は避けて、余計なことは口にしないようにするべきです。
あいまいな回答は避け、後日回答する
質問されると、あいまいなことであっても何とか答えようとしてしまいがちですが、明確に覚えていないことをその場で答える必要はありません。あいまいな回答はかえって指摘事項になってしまう可能性があるため、調べてから後日回答する対応で問題ありません。
税務調査で申告の誤りが指摘されたら?
もし税務調査で申告の誤りが指摘されたら、税務調査後に実際支払うべき税額よりも少なく申告していたということで、指摘された事項を元に正しい申告書に修正して申告する「修正申告」の手続きが必要となります。
その場合、実際の支払うべき税額と、すでに申告している税額の足りていない差額分に加え、いろいろな追徴課税分を納付しなければなりません。追徴課税の種類はおおよそ以下のようになります。
■ 重加算税 35%~40%
■ 延滞税 14.6%
実地調査によって何かしらの追徴課税になる割合は、調査数の約70%程度になっており、かなり高い割合で追加納税になるケースが多いのが実態です。
重い脱税だと逮捕されることも…
脱税とは、偽りその他不正の行為によって税金の納付を免れ、または還付を受けることをいいます。
脱税に対しては厳罰化が進んでおり、非常に重い罰則が設けられています。重い脱税だと認定されると逮捕されて、その事実が新聞に載る場合もありますので注意が必要です。
脱税をした場合、下記のような刑罰があります。
① 虚偽過少申告逋脱犯・虚偽無申告逋脱犯の罰則
偽りその他不正の行為により税金の納付を免れ、または税金の還付を受けた場合は「10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、または併科」に処せられます
(所得税法第238条第1項、法人税法第159条第1項など)
② 単純無申告逋脱犯の罰則
故意に申告書を提出しないことにより納税を免れた場合は「5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金または併科」に処されます
(所得税法第238条第3項、法人税法第159条第3項など)
③ 不納付犯の罰則
源泉徴収義務者が、徴収して納付するべき税額を納付しなかった場合の罰則は「10年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金または併科」です
(所得税法第240条第1項、地方税法第328条の16第1項など)
④ 単純無申告犯の罰則
正当な理由がなくて申告書を提出しなかった場合は「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」に処せられます
(所得税法第241条、法人税法第160条など)
脱税で逮捕されると…
逮捕されると身柄が拘束されて外部との連絡や面会は許されません。どんな処分になるのか、自分の対外的な評価はどうなってしまうのか、仕事や会社への影響はどうなるのかなどの多くの不安を抱えながら、たった一人で厳しい取り調べに応じることになるので、精神的な負担がかなり重くなります。
脱税が発覚する税務調査の種類
① 通常の税務調査
税務調査は所轄の税務署によって行われます。任意の調査なので事前に税務署から電話連絡があり、日程を確認したうえで調査を受けます。
通常の税務調査では脱税や申告漏れを見つけて、正しく納税させることを目的としています。そのため税務調査で申告漏れなどが発覚した場合は、追徴課税で本来必要な税金を納付すれば刑罰までは科されません。
ただし、税務職員の質問に対して答弁しなかったり、偽りの答弁をしたり、検査を拒むなどをしたりした場合には、「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」に処せられますので注意が必要です(国税通則法第128条第2号)
② 資料調査課(リョウチョウ)の調査
資料調査課(リョウチョウ)は国税局の最新鋭部隊で、マルサと同じく無予告調査です。しかし、リョウチョウは任意調査です。
資料調査課(リョウチョウ)は資料を基に「選定」と「調査」を行うセクションで、その資料は「仮名預金」の資料から「不正取引」の資料など、広範で中身の濃い大口・悪質事案に関するものです。数ある資料から大きな不正が想定される事案をピックアップして、事前に徹底的な下調べ(事前審理という)を行ってから調査に入ります。
③ 国税(マルサ)による犯則調査
国税局査察部(マルサ)による犯則調査とは、脱税犯の摘発を目的とし犯罪捜査に準ずる方法で行われる調査のことです。調査は無予告調査です。
所轄の税務署が行うものではありません。調査には国税犯則取締法第1条にもとづく任意調査と、第2条にもとづく強制調査があります。
事前の連絡や調査対象者の同意は必要ないので、突然に大勢の捜査員がやってきて、一気に調査が開始されます。
国税庁が発表した『令和2年度 査察の概要』 によると、検察庁への告発率は73.5%と非常に高い水準になっています。マルサによる犯則調査を受けてしまうと高い確率で告発までされてしまいます。
脱税で逮捕されたあとの流れ
犯則調査で脱税の証拠が押収されて検察庁への告発が行われると、その後の逮捕の危険が非常に高まります
① 取り調べ・勾留請求
脱税事件では、検察官が捜査・逮捕を行います。そのため、検察官は逮捕から48時間以内に取り調べと裁判官へ勾留請求を行うかを判断します。
② 勾留決定
勾留とは、起訴・不起訴を判断するために、引き続き身柄を拘束したうえで、取り調べや捜査を行うことです。
勾留を請求し裁判官が認めた場合、被疑者は原則10日間、そして延長が認められるとさらに最大で10日間にわたって身柄拘束を受けます。
脱税事件では、関係者との口裏合わせや証拠物の改ざんといった証拠隠滅を行うおそれがあると認められると、勾留請求をされる可能性は高いです。
③ 起訴・不起訴処分の決定
勾留が満期を迎えるまでに、検察官は被疑者を起訴するか、不起訴にするのかを決定します。不起訴になれば身柄は釈放され、刑事裁判を受けることはありません。
ただし、脱税事件の場合、国税局査察部は裁判で有罪にできるだけの証拠がそろった段階で検察官へ告発しています。なので起訴される可能性が極めて高いでしょう。
④ 刑事裁判
起訴されると被告人と呼ばれる立場となり、刑事裁判が始まるまで引き続き身柄を拘束されます。起訴後には保釈請求を行うことができます。保釈が認められると一時的に身柄が釈放されて自宅に戻ることが可能になります。
⑤ 判決
刑事裁判の審理を経て、最終的に裁判官から有罪か無罪かが争われ、有罪の場合は量刑が言い渡されます。
日本の司法における起訴後の有罪率は極めて高いことで有名ですが、国税庁によると、査察事件の一審判決における有罪率は2018年と2019年ではともに100%の有罪率、2020年では98.9%でした。起訴されたら有罪からまず免れないでしょう。
逮捕までに発展しそうな場合には事前に相談を
税務調査で税務署から任意調査の日程調整の電話があった場合で、税務調査に大きな不安を抱えている時や、国税庁の資料調査課(リョウチョウ)や査察部(マルサ)の無予告調査が突然入って、すぐに適正な対策と対応を取らなければならない場合、できるだけのことをやらなければなりません。
その際にはそれなりの費用はかかりますが、税務調査のプロフェッショナルチームに緊急で対応をお願いするのが一番良い方法だと思います。
既存の顧問税理士だけでは、会社の危機に直面しているかのような、本当に重要な場面での対応はできないでしょう。
確認の大きな脱税を指摘されそうな場合には、やはり税務調査の対策に強い、税務調査対応専門の税理士チームに依頼するのが良いでしょう。別の記事で税務調査対応専門の税理士チームについては解説しています。
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